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ノアの箱舟
〜箱舟と洪水伝説の真相〜
* 神の声 *
 ある昼下がりの午後、野良仕事をしていたノアという信心深い老人は神の声を聞いた。その声は、ノアに近い将来に大洪水が起き、すべての人間が滅びるだろうということを示唆するものだった。しかし、神は善人で信心深いノアとその家族だけは助けてやるつもりだと言い、大きな箱舟を作ることを命じたのである。
 神は、アダムとイブを創ったが、やがてその子孫は、数を増し大地に溢れるまで増えていった。しかし、人間の数が増えるのに比例して大地には、悪が増加し、悪得が氾濫するようになっていった。やがて、神は人間を創ったことを多いに後悔し、大洪水を起こしこの地上から悪人どもをすべて消し去ろうと決心したというのである。
  従順なノアは神の言葉を信じ、さっそく箱舟づくりにとりかかることになった。

 さらに神はノアにつくるべき箱舟の大きさを告げた。
 町の人々は、彼らを頭がおかしくなったとして嘲り笑ったが、ノアとその家族は、そういった野次に耳を貸すことなく黙々と作業に従事した。
やがて、長い年月を経て箱舟は完成した。
 いろいろな動物がどこからともなく集まって来た。それらは、神に選ばれたつがいで、本能でこれから起こることを予知していた。
 動物たちは、ノアが笛を吹くと、おとなしく箱舟の中に入っていった。
 最後に食糧を箱舟に乗せたノアは、妻と3人の息子夫婦の合計8人を乗り込ませ、入り口をしっかりと閉ざしたのである。
* 大洪水のはじまり *
 その頃より、雷が鳴り、雨が降り始めた。それはたちまち、ものすごい大雨となり、それは連日連夜続いた。やがて、それは山々をも越えるほどの洪水となった。大洪水は40日と40夜の間、絶えまなく続いた。
 大洪水によって、水かさは増し続け、高い山々もすべて水面下に沈んでしまった。
 一切合切の全ての物は、水没して死に絶えてしまった。
 しかし箱舟に乗っていたノアとその家族、そして動物たちだけは命を長らえることが出来たのであった。
 それからというもの、箱舟はひたすら水の上を漂った。


 やがて、水位が下がり始め、ノアは様子を見るために、ある朝、一羽のカラスと鳩を放すことにした。カラスはそのまま戻ってこなかったが、鳩は夕方になると戻って来た。そのくちばしには、引きちぎられた新鮮なオリーブの実がくわえられていた。それは、近くに陸地があるという証拠だった。
 そうして、7月と17日目に、箱舟は陸地に乗り上げたのである。
 そこは、アルメニア地方にそびえる最高峰アララト山の頂きだった。
 ノアとその家族は、そこで、水がおさまるまで待った。
 そして、ようやく一年ぶりに大地に立たづむことが出来たのであった。
最後に神はノアにこう告げた。
「もう二度と、このように大地を呪い、全ての生き物を殺そうとすることはない。私は、雲に虹をかけよう。それは、私とすべての生き物たちとの心の触れ合いになるだろう」
* 古代シュメールの洪水伝説 *
  ・・・以上は、旧約聖書の創世記にある「ノアの箱舟」という有名な話である。怒りにまかせて、すべてを洪水によって消し去った神も、ここに至り、ようやく気がすんだともいうべきであろうか。しかし、このような洪水伝説は、旧約聖書の中だけにある話ではないのである。近東周辺には、似たような伝説がたくさんある。

 古代メソポタミアには、「ギルガメッシュ」という叙事詩がある。それによると、神々の一人、天空の神エンリルが、増え過ぎた人間たちの騒ぎ立てる音で、ついに不眠症になってしまったところから原因が始まる。苛立ちを覚えたエンリルは、様々な天変地異をもたらして人間たちに反省を促そうとしたが、人間は少しも改める様子がなく彼らの騒ぎ立てる騒音は、ますますひどくなる一方であった。
 とうとう頭に来たエンリルは、大洪水を起こして、劇的にすべてを始末してしまおうと考えた。計画は成功しそうに見えたが、寸前のところで出産の女神イシュタルは、絶望のあまり泣き出し、知恵の神エアは好意を持った一部の人間に箱舟のつくり方を教えて、様々な動物とともに大洪水から救ったのであった。こうして、人間は繁殖と知恵の神の計らいで辛くも滅ぼされそうになったところを救われたのである。
 この叙事詩「ギルガメッシュ」は、紀元前3千年頃にメソポタミアで書かれたものとされ、恐らく世界最古のものである。つまり、旧約聖書が書かれる2千年以上も前に存在していたことになる。その後、この叙事詩は、何世紀もの間に中近東の至る所で書き写されていった。そのあらましは形を少しずつ変え異なってはいるが、一様に大洪水の伝説の形で記されているのである。したがって、古代オリエントの文献にいろいろある大洪水にまつわる伝説は、すべてこの話を起源にしているとみてよい。
 旧約聖書の場合は、エホバ一神であるが、「ギルガメッシュ」の叙事詩では、多くの神々が登場してくる。恐らく、イスラエル人が紀元前2千年〜紀元前1千年にわたり、近東の地を放浪する過程でこの話を吸収し、自分たちの世界観、価値観に当てはまるようにアレンジしていったのだと思われる。こうして旧約聖書のノアの洪水伝説が出来上がっていったのであろう。

 したがって、オリジナルという点から見れば、はるか後になって書かれた旧約聖書の話の方が二番煎じであることは否応のない事実なのである。
 これらの事実から、各地に残る洪水伝説は、はるか昔に実際起きた事件をモデルにしてつくられたものではなかったかと結論づけられる。そして、数えきれないほどの文献に記された大洪水の伝説は、すべて同一事件についての描写ではなかったかとも考えられるのである。またそれを裏付けるように、近年の発掘によって、これらの古代都市に過去に大洪水に見舞われた痕跡があることが明らかにされつつある。
* 古代遺跡に残る大洪水の痕跡 *
 1930年代には、バビロニアの遺跡発掘が進んでいくにつれ、考古学者たちは、4メートルにもおよぶ粘土質の層が広範囲に存在していることを発見した。彼らは、これらの粘土質の層は、大洪水によってつくられたものであるという結論に達した。そして、これらの大粘土層形成の原因となった大洪水は、今から3千年〜4千年ほど前に実際に起こったものと推定したのである。


 とすると、箱舟の話は想像の産物ではなくはるか過去の大洪水を逃れるためにつくられ、実存した可能性だってあるのではないだろうか?
 事実、旧約聖書の中の話や神話や伝説が、全くの寓話、作り話でない証拠に近年、神話や伝説がもとで、様々な歴史的発見がなされているのは周知の事実である。こう考えれば、「ギルガメッシュ」に記された大洪水の話は、この地方でよく氾濫を繰り返したチグリスとユーフラテス川の洪水による大惨事とだぶってくるのは否めない。

 そして、この忌わしい大洪水の記憶が、受け継がれ変形されて、ノアの箱舟伝説になっていったと考えられるのである。大洪水は、聖書に描かれているような規模ではなかったものの、人々の心に凄まじい恐怖を植えつけることは出来たはずだ。

  

一方、箱舟の存在を裏付けるような発見も、近年になって続々と報告されている。
* ノアの箱船をもとめて *
 箱舟がたどり着いたと言われるアララト山は、標高5千メートルを越し、上部の3分の1は常に雪に覆われて過酷な自然環境にあると言われている。山頂部は、7個に分かれており氷河に閉ざされた氷だけの世界である。昔から、このアララト山の頂きには伝説のノアの箱舟があると信じられていた。だが、この山は、 聖域とされており、しかも政治的な問題もからみ、最近まで、侵入することさえ困難な場所だった。
 それでも、箱舟見たさに、禁を犯して箱舟を探険したいという願望を持つ人間が後を絶たなかった。
  こうして、箱舟探険の歴史は19世紀中頃より、活発に行われるようになったのである。
箱舟が漂着したと言われるアララト山
 1892年には、ある教会の副司教は、ノアの箱舟を探しにアララト山頂に入った。そして、ついに巨大な船の遺物を発見したと報告した。その巨船は永遠の閉ざされた氷河の中にあった。彼は、目の前に広がる光景に圧倒され、聖書が真実であったと感動しながら述べている。彼は、その木片の一部を持ち帰り、修道院の至宝にしたと言われている。
 20世紀に入ると、箱舟探険は黄金時代を迎えた。1916年には、ロシア人パイロットが、上空を飛行中にアララト山斜面に巨大な船の跡を発見したと報告している。当時のロシア皇帝は、ただちに探検隊を派遣し、調査の結果、それは箱舟だと言う結論に達した。しかし、不幸にも翌年起こったロシア革命によって報告書は消失してしまった。
 1953年には、ヘリコプターのアメリカ人パイロットが、アララト山の斜面に巨大な箱舟の跡を発見し、30メートル上空から鮮明な写真を撮っている。

 1956年には、フランスの探検隊がアララト山の氷河と氷湖の間で、巨大なL字型の船の竜骨を発掘した。
 さらに1969年には、今度はアメリカの探険隊が、氷河の中からその一部を持ち帰ることに成功した。専門家が炭素による年代測定を行ったところ、紀元前3千年頃の木材であり、化石化していたことが判明した。
 その後も、探険は何回か行われ、ある時は何も発見することなく空しく終わることもあったが、中には、決死的覚悟でノアの箱舟の一部と思われるものを持ち帰った探検隊もあった。

 なにせ大部分は、電動ノコも全く寄せつけぬ氷層下にあるため調査は難航しているということである。ある探検隊は、地中レーダーを使ったこともあったが、その結果、分厚い氷層下にあるそれは、糸杉でつくられた紀元前3千〜4千年ほど前の巨大構造物であり、竜骨、柱、リベット、イカリらしきものも確認されたと報告している。
 人工衛星からの画像からも、巨大な影が捉えられたこともある。それによるとその構造物の形は、旧約聖書に出てくる箱舟のようなシルエットであり、これは1965年にロンドンのディリー・テレグラフ紙に発表されて、一大センセーショナルを巻き起こした。

 この画像によると、箱舟の大きさは、全長150メートル、幅24メートル、高さ15メートルにおよぶ巨船ではなかったかと推定されている。これは豪華客船クイーン・メアリー号の3/2に匹敵する規模である。しかもこのサイズは、神がノアに箱舟をつくる際、命じた寸法とほぼ同じなのである。
 詳細は、今後の調査を待たねばならないが、聖書の世界だけの幻象と考えられてきたノアの箱舟が、過去に実際起きた事実に基づくものであったならば、我々の持つ既存の認識に大衝撃をもたらすであろう。
ノアの箱舟は現代最大のオーパーツなのである。
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