縁起の悪いもの
〜物体に秘められた呪いのシステムの謎〜
 所有者に不幸をもたらし続ける宝石、事故を起こし続ける車や船、身につけると悪いことばかりが起るアクセサリー ・・・世の中にはそれに関わり合いになるだけで、災いをもたらすとされるものが少なからずあるようだ。

 では一体、それは何が原因でそうなるのだろうか?  それとも、それは全くの偶然の結果に過ぎないのだろうか?  また、所有者の思い込みがそう言った結果をもたらしてしまうのであろうか? 
 悪運に取り憑かれた車として筆頭にあげられるのは、20世紀初めに、オーストリア皇太子夫妻が、ボスニアの都市サラエボの町を公式訪問中に乗っていた乗用車があげられるであろう。
 夫妻は、同市を通過中、銃によって狙撃され、まもなく暗殺される運命にあった。時に1914年6月28日。それがきっかけで歴史上最初の世界的規模の大戦争に発展するのである。
 この4年半にも及ぶ第一次世界大戦によって、地球上にある文明国の半分は巻き込まれてしまい、忌わしい残虐な殺戮によって、3000万人を超える人々が犠牲となり地球上に恐怖と憎悪と破壊の嵐が吹き荒れたのは周知の事実である。
 夫妻が死亡した後も、大戦中、この車は使われたが、わけのわからぬ事故が絶えることはなかった。まず、最初の所有者である将軍は、不名誉な敗北が原因で狂い死にしてしまい、次にこの車を受け継いだ大尉は、9日後に事故で二人をひき殺したあげく、木にぶつけて首の骨を折って死んでしまった。
 大戦後になって、ユーゴスラビアの長官がこの車を所有したが、数カ月以内に何度も交通事故を起こして片手を失ってしまった。
 長官はこの車をある医師に売ったが、半年もたたぬ間に、その医師は道路わきの溝に落ちるという事故で死んだ。
暗殺されたフランツ皇太子夫妻が乗っていた車
 次の所有者は宝石商だったが、どういう理由によるものか1年後に原因不明の死を遂げた。
 7番目になる所有者は、ある有名なレーサーだったが、まもなく、レース中に車から投げ出されて不慮の死を遂げた。次にこの車はセルビアの裕福な農場主に移ったが、ある日、走行中にエンコして、その修理中に突然エンジンが動き出し暴走するという考えられない事故を起こした。結局、車はひっくり返り、その下敷きになってその農場主は死んだのである。最後の所有者は、自動車修理工場の経営者だったが、別の車を追い越そうとして接触事故を起こし、その経営者と同乗していた4人はことごとく死んだという。
 こうして、この車は実に所有者を10回以上も変え、そのすべてに不幸な死をもたらしたのである。そして、死神に取り憑かれ呪われた車として知れ渡り、今は誰も引き取り手がないまま、ウイーンの博物館にひっそりと置かれているという。
 19世紀に建造された2隻のイギリス船、ヒネモア号とグレート・イースタン号の場合も同じように不吉で気味の悪い歴史を持っている。
 ヒネモア号は処女航海の時、4名の水夫が病気で死んだという。また、ヒネモア号の5代に及ぶ船長も次々と狂死したり、自殺したり、わけのわからない不幸な死に方をしているのである。後になって、この船はバラストとして用いた荒石がロンドンのとある墓地から持たらされた古い墓石の一部だったことがわかったという。
 グレート・イースタン号は、この当時建造された最大級の船であったが、最初から呪われている船だった。まず処女航海時に原因不明の爆発を起こし5人が死んだ。その後も事故や爆発、衝突が絶えないために、進水してから15年も経たぬうちに、解体されることになってしまった。しかし、解体してみると、驚くべきことが判明した。船体と船体との間で2体の骸骨が発見されたのである。
 その2体の骸骨は、建造中に行方不明になったリベット工とその見習工のものであった。恐らく、建造中、何らかの事故に巻き込まれ、生きたまま船体と船体の間で閉じ込められ死んだものと思われた。
 所有者に不幸をもたらし続けた宝石としては、ホープ・ダイヤが知られている。

 このダイヤモンドは、今から330年ほど前にフランスのある探検家がインドの古い寺院で発見したものであった。寺院の仏像の額の部分に、とてつもなく巨大な宝石がついているのを見つけた探検家は、それが300カラットはあろう巨大なブルーのダイヤであることを知り狂喜して仏像からはぎ取り故国フランスに持ち帰ったものであった。
 その探検家は、大金と引き換えに、当時の国王ルイ14世に売り渡した。やがて、この巨大なブルー・ダイヤの原石は美しく研摩され67カラットの宝石に生まれ変わり、「フランスの青」と呼ばれるようになった。
 この時代は、華やかで知られるバロック文化の絶頂期であった。ルイ14世は太陽王とも言われ、公私ともに何ごとにも精力的にエネルギーを注ぎ込む王として、絶大な権力を有していた。 
 しかし、ここからこのダイヤの呪われた数奇な運命が始まるのである。
見事なブルーに輝く巨大なダイヤを手中にして、まもなく、ルイ14世は病死してしまうのである。
ルイ14世
 王の死後、財政難に陥ったブルボン王朝は、急激に衰退の一途をたどる。次にこのダイヤを受け継いだルイ16世は、この後、すぐに起ったフランス革命で、オーストリアに逃亡を企てるも失敗し、王妃とともにギロチンにかけられて処刑されてしまった。
 その後、約100年間、行方知れずになっていたダイヤだったが、オランダで発見された時は、44カラットに再研摩されていた。オークションで、イギリス人の実業家が手に入れたが、わずか6日後に落馬によって死亡してしまった。
 次の所有者は、大富豪だったが、彼はこのダイヤに祟りがあると聞いても動じることがない人物であった。それどころか、そう言った悪い噂を払拭するために、彼はこのダイヤにホープ・ダイヤ(希望のダイヤ)と名づけることにした。だが名前を変えても何の効果もなかった。ある夜、火事によって一家全員が焼死してしまったのであった。
 その後も このホープ・ダイヤは、その名前とはうらはらに次々と宝石商や所有者となった人間に不可解な死を持たらし続けた。
 何回目かの所有者となったワシントン・ポスト紙のアメリカの実業家は、このダイヤを手に入れると、ダイヤにまつわる話を特集しようとしたが、その最中、息子が交通事故で死亡し、ほぼ同じくして娘が橋から落ちて水死してしまった。この実業家はこれがショックで発狂してしまった。
 その後、ある宝石商の手に移ったが、彼も何ともわけのわからない不幸に幾度となく遭遇して恐れをなし手放してしまった。しかし、オークションにかけられても、買い手がつかず、ついにスミソニアン博物館に寄贈されてしまったのだった。
 こうして、約300年間にわたり、数奇な運命をたどりつつも、所有者にことごとく不幸をもたらし続けたホープ・ダイヤは、博物館の大金庫の中に安住の地を見い出したかのように、今は静かに眠っている・・・
 これらの言わば、縁起の悪いものはどう解釈すればいいのだろうか? 世に言う呪いがかけられているのが原因なのだろうか? それとも、思い込みによるストレスの結果が引き起こした偶然の事故なのだろうか?
 あらゆる現象に因果関係があるとするならば、全くの偶然だけでは済まされないであろう。例えば、ヒネモア号の場合は、船のバラストとして墓場の荒石を使っていた。グレート・イースタン号は建造中に二人のリベット工が、生きたまま誤って船体に封じ込まれてしまったのである。そのために、負の膨大なエネルギーが物質に取りつくことになったことは大いに考えられることだ。 それがために、忌わしい事故の原因になっていったということも考えられぬことではない。
 こうした不幸な事故が繰り返されるにしたがい、人々はこうした船や車を呪いのかかったものとして恐れるようになっていったと考えられるのだ。
 科学が飛躍的に発達した現代でも、わけのわからぬ未知の領域が存在するのは事実だ。一部の迷信は彼方に追いやられる一方、現実のすぐ裏側には、光のあたらぬ世界が密着し常闇の領域が広がっているように思える。
 時をさかのぼってみると、限られた領域内でも、戦争、飢饉、疫病、天災など歴史の犠牲となった膨大な霊が浮遊していると考えられる。当然、それらの中には、人間以外のものも数多く含まれている。これらの霊は地縛霊と化して時空を越えて特定の場所にとりつき負のエネルギーを構成していると考えられるのだ。
 そうした場所は、都会の路地、公園、往来の激しい道路、家の前にある草むらから、持ち主の代わる賃貸住宅に至るまで、我々の日常生活空間にまで複雑に入り組んで交錯していると思われる。
 家やビルを建てる時には、地鎮祭という儀式が行われる。それは、恐らくは、その地に刻まれたおびただしい恨みを持って死んだ地縛霊を浄めるための方法であり、負のエネルギーがこれから、建てられる物にとりつくことのないように願って行われる昔からの知恵であると言えよう。
 縁起の悪いものと言われるものにも、必ず固有の因果応報があるはずだ。こうした所有者に次々ともたらされる災いは、陰惨な歴史に起因する負のサインと言ってもよく、そうした前兆を見逃さないようにすることが何よりも重要だと感じるのだ。
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