トンネルにまつわる怖い話
〜決して一人で行ってはいけない!恐怖の心霊スポット〜
* 少年たちの肝だめし *
「あのトンネルに肝だめしにいかないか?」少年五人グループのひとりがいい出しました。
「ええ?あそこって幽霊が出るってうわさの?」
「やばくないか?」
「五人もいれば大丈夫だよ。それにカメラも持って行こう。心霊写真が撮れるかもしれないからな」
 話はまとまり、少年たちは次の日の夜にトンネルにむかいました。シトシト雨が降っています。辺りはシーンと静まりかえり、今はもう使われていないトンネルで、かなり古くなっています。雑草をかきわけながら少年たちは入り口までやってきました。
「やっぱり気持ち悪いな」
「異次元への入り口みたいだ」その少年は懐中電灯で中を照らしました。
耳をすますと「ポタッポタッ! ポチャン、ポチャン」とトンネル内から聞こえてきます。
 五人はゆっくり中へ入って行きました。喋ると声がひびきます。
「まずは記念写真を撮ろうよ」セルフタイマーにして五人はVサインをします。ピカッとフラッシュの明かりで一瞬トンネル内が明るくなり、乗り捨てられた一台の自転車が目に入りました。
「自転車がある」「古い自転車だなあ」
「さびてるけど、まだ乗れそう」その少年はサドルにまたがってベルをリンリンと鳴らしました。するとどこからかリンリンと聞こえて来ます。反響したのでしょうか。
「何だ今の音は」
「もう一回鳴らしてみろよ」と言われもう一度鳴らしてみます。今度は、子供のクスクス笑いが聞こえたようです。
「おーい、誰かいるのか?」五人は耳をすませて反応を待ちます。
 シーンと静まりかえって聞こえるのはポチャンポチャンと雨もりの音だけでした。自転車に乗っていた少年が降りようとしたときです。ズシッと後ろに重みを感じました。「やめろよ、ふざけるのは」しかし、仲間の四人はそばにいていたずらした様子もありません。「う、うわー」少年はさびた自転車から飛び降りました。「どうしたんだよ」「今、誰かが後ろに乗っかってきて、僕の肩をつかんだ」
「ええー?」
「もうやばいよ、このトンネル絶対何かいるって」
五人組は走って引きかえそうとしました。もう一度トンネルの奥の方を懐中電灯で照らします。そこにうっすら何か見えました。子供のようなシルエットです。小さな白い顔が光に反射しています。手招きしているように見えました。
「おい、あれ・・・子供じゃないか? 小さい男の子だ」「手を振ってるよ」
 うす気味が悪くなった五人は互いの目を見つめ合いました。「で、出たー!」ひとりが大声で叫ぶと、後はもう無我夢中です。五人は一斉に悲鳴をあげながら入り口向かって走り出しました。ところが必死に走っているにもかかわらず、足に力が入らずになかなか思うように走れません。足は水浸しで靴はドロドロです。そして背後からは自転車のベルの音と子供のケラケラ笑う声が響いて来ました。もう恐怖で心臓はパンク寸前です。
やっとのことで少年たちはトンネルの入り口まで戻ってきました。少年たちは前かがみになり、四つんばいになったり、あまりの苦しさにゼイゼイ呼吸を整えています。
外はいっそう雨がはげしくなっていました。もう、ベルの音も不気味な笑い声も聞こえません。
「今の何だったんだろう?」やがて少年がひとり言のようにつぶやきましたが、それに返事する者はいませんでした。
 後日、写真を現像してみると、Vサインをしている五人の横からにゅーっと顔をだしている七歳くらいの男の子が写っていたということです。そして、トンネル内にあった古い自転車に乗った少年はその日をさかいに高熱にうなされて体調をくずしてしまいました。他の四人もそのことを思い出したくないのか、誰ひとり口にしません。きっとそのトンネルは過去に忌まわしい事故か事件があったのに違いありません。それ以来、トンネルは封鎖され中には入れないようになってしまいました。しかし、それからも夜中に近くを通りかかった人は、自転車のベルの音を聞いたり、男の子の姿を目撃したということです。
( K. I .レポートより)
* 亡霊の浮遊する恐ろしい場所 *
 古いトンネルや閉ざされた廃道は、閉鎖された空間であるがゆえに霊が集まりやすい場所だと考えられている。近くに古戦場とか陰惨な殺人事件、もしくは恨みを残して自殺した現場などがあった場合、こうしたすべての霊が集まってくるのである。
 そういう意味では、トンネルは非常に危険な心霊スポットとなる要素をそなえているといえるだろう。付近で自殺や殺人事件なども多発するのも、ある意味、こうした地縛霊の残留思念が人の頭を狂わせ、そうさせるのであろうか。
 よく真っ暗なトンネル内でクルマのエンジンを切ってクラクションを3回鳴らすと、恐ろしい現象が起こると言われるが、そういう軽はずみな行為は、危険な代償に直結することにもなりかねないので注意が必要だ。
 こうしたトンネルは全国に無数にあるというが、その主だったところを紹介するとしよう。
* 全国にある幽霊トンネル *
 まずは、大阪と和歌山の県境にある犬鳴(いぬなき)トンネル。ここはいろいろな奇怪な霊現象が起きるとされ、関西でも一、二位を争うほどの心霊スポットだ。
 この名前の由来には悲しい話が秘められている。1100年ほど前のこと、猟師が鹿を射ようとしたが、つれている犬が吠えたてるので鹿が逃げてしまった。怒った猟師が犬の首を刎ねたところ、犬の首は宙を舞い、草むらに潜んでいた大蛇に噛みつき息絶えた。犬は猟師を襲おうとしていた蛇にほえていたのであった。犬の忠義に心を打たれた猟師は、菩提をとむらうために近くの寺で剃髪し僧となった。それ以後この山は犬鳴山と呼ばれるようになったというのである。
 さて、この犬鳴トンネルの近くでは、真夜中に走っていると白い服を着た女の幽霊や半そで半ズボンの少年の霊、乳母車を押す老婆の霊、赤ん坊を抱いた女の霊などが目撃されるという。
その服装から、いずれも昭和初期の時代の霊ではないかと考えられる。
 トンネル内では、ささやくような声やうめき声も聞かれることもあるという。かつて、トンネル内でテープレコーダーを持ち込み、幽霊の声を録音しようとした者がいたが、周囲は静寂そのもので、結局、声らしき音は聞こえずじまいであった。ところが、家に帰ってもう一度、聞いてみると、かすかに赤ん坊の泣く声が録音されており、ショックでその人間は発狂したという話がある。
 また、このトンネル付近で写真撮影すると、よく気味の悪い心霊写真が撮れることが知られており、オーブと呼ばれる白い半透明の球体もよく写り込むそうである。
 つぎに関東で一番怖いトンネルといえば、なんと言っても、神奈川県道311号線にある小坪(こつぼ)トンネルであろう。このトンネルは6本のトンネルの総称だが、とりわけ霊現象や奇怪な事故が多いのは、逗子から鎌倉方面に向かう名越トンネルと小坪トンネルであるとされる。この近くには火葬場や墓地が昔からあることが知られており、不可解な現象との関係も否定できない。これらは、テレビの心霊特集・ワイドショーなどが放送される際には必ず取り上げられてきた場所である。
 具体的な話になると、かなり多種多様な報告がされているが、主だった例をあげると、トンネル内を走行中に下半身のない男性が急に横切るというもの、トンネルの天井から逆さまになった髪の長い女の幽霊が出没するというもの、タクシードライバーがふとミラーを見ると気味の悪い女の顔が写っていたというもの、逆に、女の客を乗せたはずが走行中に消え失せ、座席が濡れていたというものなどがある。
 この他にも、首のない戦国時代の落ち武者の亡霊が出没したとか、大東亜戦争時の兵隊の亡霊があらわれたというのもある。
 一度など、酔狂な若者がトンネル内でヘッドライトを消してクラクションを3度鳴らしたところ、「ボンッ!」とけたたましい音をたてて、何かがボンネットに落ちてきたという話もあり、クルマの窓ガラスに子供らしき手の跡がついたというのもある。
 また、暗闇から急に老婆があらわれ、クルマのあちこちをコツコツ叩いたあげく、「ガチャガチャ」とドアを開けて入ってこようとするので、恐怖に駆られたドライバーがクルマを急発進したところ、ものすごいスピードで老婆が後を追いかけて来たという気味の悪い話もあるということだ。
 近年、改修工事が行われるごとに地縛霊供養のお祓いがされていると聞くが、それでもタクシーなどは、あえて深夜にここを通るのを避けるそうである。過去に、肝だめしを行った際、恐ろしい体験をして精神病院に入ったというタレントの話は有名で、今もこのトンネルの先にあるガソリンスタンドは、奇怪な体験をして気が動転した人が逃げ込んで来るとさえいわれている。ここは成仏できない霊が非常に多い心霊スポットだといえるだろう。
 東海地方にある伊勢神(いせがみ)トンネルは怪奇現象がよくあらわれることで有名な心霊スポットだ。東加茂郡と北設楽郡にまたがる伊勢神峠を貫く旧伊勢神トンネルは、明治30年に竣工したが、時代の経過と共に交通量も増え、旧トンネルは手狭になってしまい、昭和35年に新トンネルが開通している。
 亡霊の目撃談は、女の幽霊・子供の幽霊・トンネル工事労働者の幽霊などの報告が多い。旧トンネルの方は「幽霊が出る」という噂が当初からあったようで、新トンネルの方も、地元の新聞にも載るほどの幽霊騒動が持ち上がったらしい。
 それは夜中に新トンネルを走っていると、和服姿の女が手を振るのが目撃されるというものである。
「一体、どうしたのかこんな真夜中に」と思ってクルマを停車すると女はいつのまにか消え失せているというのだ。
 こうした目撃証言が多数寄せられるにつれ、トンネルに現れる和服姿の女は伊勢湾台風で亡くなった幽霊ではないかと考えられるようになった。
 伊勢湾台風は多大な水害で多くの人間を死傷させた台風として知られているが、土砂災害で生き埋めになった女子供も少なくなかった。こういう事実から、女性や子供の亡霊の目撃談が数多く寄せられるのではないかと考えられているのだ。
 石川県と富山県の県境には、たびたびテレビでも紹介されたこともある牛首トンネルと呼ばれる評判の心霊スポットがある。ここでは過去に事件に巻き込まれてトンネル内で焼身自殺した者がいたという話もあり、そのためなのかトンネルの中ほどにはお地蔵様が祀られている。
 怪奇現象としては、お地蔵様が血の涙を流すという話や、車に乗っていると老婆の幽霊が車に乗り込んでくるという話がある。また、落ち武者の霊が目撃されたという話も報告されている。
ところで、ここに安置されているお地蔵様は3体目らしいのだが、肝だめしに乗じて、地蔵様の首を折ったり、落書きをしたり、小便をかけるという不埒な者がいたらしい。
その結果、地蔵にいたずらをした者には災難がふりかかったといわれている。ある者はドライブ中にダムに転落して死亡。またある者は不幸つづきで家庭崩壊し、ある者は精神に異常をきたしてしまったということだ。
 北海道には常紋(じょうもん)トンネルという折り紙つきの心霊スポットがある。これは全長507mほどあり、100年ほど前に3年の工事の末にようやく開通したいわくつきのトンネルだ。 常紋トンネルは、完成当初から亡霊などがよく目撃されたことでも知られていた。
 労働者とおぼしき亡霊がトンネルや信号場所などによく出没したようで、そのため近くの常紋駅の駅員やその家族がノイローゼになり、ついには自殺者まで出たらしい。
 1970年に起きた十勝沖地震の際には、トンネルの壁面が破損してしまい、改修工事がおこなわれたが、そのとき壊れた壁からなんと200体にものぼる白骨死体が発見されて一大ニュースとなった。
 白骨はほとんどが立ったままの姿勢で埋められており、このトンネル工事に従事した労働者たちの成れの果てであった。彼らは重労働と栄養不足から次々と倒れ、そのまま見捨てられて工事現場に生き埋めにされたのである。
 ほとんどの遺骨には、ひじょうに重いものを長時間かつがされたときに見られる圧力裂傷が見られた。これまで、工事に従事したと思える労働者の亡霊がトンネル内で何度も目撃されていることから、「常紋トンネルには人柱が埋まっている」といううわさが長年、立てられていたが、多数の白骨体の発見でこれが真実であったことが証明されたのである。
 彼らは「金儲けが出来る」などとうまい話に乗せられてつれて来られ、タコ部屋労働に投じられ、悲惨な運命をたどったのである。
 ある若者は、家出して上野公園にいたところを騙されて北海道までつれて来られた。労働は深夜の3時から夜が更けるまで続けられ、耐えがたい重労働に病気になる者が続出したが、医者にも見せず、見込みがないと思われた者は線路の下に生き埋めにされたという。町から巡査が見回りにきた際は、わいろを使ってごまかした。見張りの目をぬすんで逃げ出そうものなら、業者がピストルをもって追跡し、捕らえられると、見せしめのために火あぶりにされたということだ。

 こうして、逃げることもままならず、過酷な重労働にたえかねて命を落としていった者は数知れない。こういう悲惨な出来事のうえに完成した常紋トンネルは、日本史の陰惨な歴史をそのまま形にした血ぬられた場所ともいえるだろう。 なお、1980年には「常紋トンネル工事殉難者追悼碑」が建てられたという。

 九州福岡県にある旧仲哀(ちゅうあい)トンネルも屈指の心霊スポットとして知られている。七曲峠を上がっていくと旧仲哀トンネルが見えてくる。ここは昔から自殺者が多い場所として知られており、供養のための花と供え物が絶えることがない。
 ここは50年ほど前に、西口彰事件と呼ばれる陰惨な殺人事件があった場所としても知られているところで、またバラバラ殺人の死体が捨てられたこともある場所である。過去にバスが転落し数十人が亡くなるという悲惨な事故も起こっており、トンネル付近での事故が非常に多い。最近は、トンネル入り口付近に設置された公衆電話ボックス内で女性の幽霊が目撃されるという報告がある。
 おなじく福岡県には、県道21号線上にある旧犬鳴トンネルも怪奇現象の多発する場所として有名なところである。この犬鳴という名称は前述の関西の「犬鳴」と同地名であるが関連性はない。
 ここには気味の悪い都市伝説があることでも知られている。隔離された人々が峠の奥深くに住みついて特異な集落をつくっているというのである。
 その集落は犬鳴村と言い、村人は現世人を激しく憎んでおり、侵入してくる人間には情け容赦ない攻撃をしてくるのだ。
 トンネルの出口には「これより先、日本国憲法は通用せず、命の保証はない」などと書かれた立て札が出てくる。それを無視して入っていくと、どこからか手斧をもった人間が襲ってくるというのである。
 逃げようとすると、その人間は斧を振りかざして信じられない速度で追いかけてくるという。
 犬鳴村は存在しない村と言われているが、このトンネルの向こうは異次元の世界にでも通じているのだろうか?
 このように見ると、トンネルやその付近の場所は霊が浮遊している危険な場所であるといえるだろう。行き場をなくした霊、または怨念が強いため成仏できない霊など、生きている人間によくないことをもたらす悪霊が無数に浮遊し、過去の時間が止まったままの恐ろしいゾーンなのである。決して興味本位だけでの軽はずみな行動は慎むべきであろう。
トップページへ
 参考文献・資料
http://shichikasha.info/stories/1/chapters/30   七花舍(常紋トンネル)
http://www.h2.dion.ne.jp/~cha2/essay/kaitaku/main.htm (北辺に斃れたタコ労働者)
アクセスカウンター

inserted by FC2 system