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悪魔の海域
〜航空機や船が次々と失踪する恐怖の海の墓場〜
 世界には、多くの船や飛行機を跡形もなく飲み込んでしまうという恐ろしい海域が存在するようだ。そこでは、一度消失すると、まるで、異次元の世界にさらわれたかのように、一片の残骸すら残さずに永久に消え去ってしまうのである。そして、ほとんどの場合、救助信号すら発した形跡もない。

 そういう意味で、アメリカのフロリダ沖の海域は、昔から、船舶、航空機が突然と消失してしまう事で知られている。
 研究者の中には、この区域内には、何か科学では解明出来ない不思議なパワーが作用しているのではないかと考えるようになった。確かに、この区域では、未知の自然現象か何かが存在する可能性があると考えるのが自然であろう。現在、この区域は、魔の海域、バミューダ・トライアングルと呼ばれ恐れられている。

 バミューダ・トライアングルという名は、ビンセント・ガディスという作家が名づけたものである。彼は、船などの海難事故を調査している際に、特定の区域内に奇怪な事故が集中していることに気がついた。その区域とは、バミューダ島、プエルトリコ、フロリダ海岸を結ぶ三角形の形をしたエリア内で、ここでは、他のどの地域に比較しても、わけのわからない船舶や航空機の失踪事件が多発していたのである。記録を見ると、実に、1945年以降だけでも、数百以上の失踪事件が起こっており、失われた人命も千人を越えていたのである。この数は、常識を越えた驚くべき数字と言っていいだろう。では、それは、どのような事件なのだろうか?
* 次々と失踪する艦船と航空機 *
 1945年12月5日に最初の航空機の失踪事件が記録されている。訓練中のアメリカ海軍の雷撃機、五機が、この海域で、行方不明になったのである。しかも、救助に向かった飛行艇も、続いて、同じように行方不明になってしまった。
 その日は、快晴で、風も穏やか、絶好のフライト日和だった。
 午後2時10分、アメリカ海軍のアベンジャー雷撃機五機は、訓練のために、フロリダの海軍基地を飛び立って行った。
 航続距離1600キロの性能を誇るこの雷撃機にとって、この訓練は、困難な任務ではなかった。
 しかし、編隊は、それっきり二度と戻ることなく、それから、5時間あまり後に傍受された無線通信を最後に、永久に、姿を消してしまったのである。
アベンジャー艦上攻撃機、大戦中は大活躍した。
 最後に傍受した無線は、あたかも、かなりの遠方より発信されているようで微弱で聞き取りにくいものだったが、その時の交信は、「計器が狂っている・・・現在位置がわからない・・・白い水に突入していくようだ・・・我々は・・・迷った・・・」という意味不明の内容だった。
 この交信を傍受した直後に、乗員13名を乗せたマーチン・マリナー飛行艇が、捜索のために、急きょ飛び立って行ったが、離陸して数分後に、これまた、同様に消息を絶ってしまった。
 それと前後して、近くを航行していた船が、空中で何かが爆発する音を聞いている。
マリナー飛行艇、大戦中は、哨戒、救助に活躍した。
 その後、3百機と数百隻を動員した徹底的な捜索にもかかわらず、失踪した6機のわずかの手がかりをも発見する事は出来なかったとある。
 1948年12月28日には、乗客27人を乗せたダグラスDC3型旅客機が、プエルトリコから、フロリダのマイアミを目指して飛行中、霧のごとく消え失せてしまうという事件が起きた。
 旅客機は、「現在、マイアミから80キロの地点を飛行中。街の明かりが見える。着陸の指示を待つ」と連絡して来たが、機は、それっきり、空港に着陸することはなかった。
 その後、徹底的な捜索が開始されたが、そのあたりは、水深六メートルほどしかないにもかかわらず、機体の破片は愚か、燃料の油膜すら発見されなかったのである。
ダグラスDC3型旅客機。1930年代に旅客機のベストセラーとして1万機も生産された。
 それから、一か月ほどたった頃、今度は、イギリスの旅客機がサルガッソー海の上空で姿を消した。海空の大規模な救助作戦が展開されたが、遺体は愚か、一片の機体の破片すら発見されなかった。しかし、この時も、同水域を捜査中の飛行機が、月光を反射する謎の光を目撃している。そして、この失踪事件も覚めやらぬわずか2週間後、同じ航路上で、またしても、イギリスの同型機が前回のように消失してしまった。そして、2機の旅客機は、何らの痕跡も発見されることはなかったのである。

 1962年には、アメリカ空軍の空中給油機が、アゾレス諸島に向けて飛び立ったきり、消息を絶ってしまった。その後のあらゆる呼び掛けにも何の反応もなく、手がかりすら、つかめなかった。
 このように、近年になって、航空機の失踪事件が、急激に増えているが、海上の船舶の失踪数になると、それをはるかに上回っている。
 1918年、アメリカの運搬船が北米の東岸に向かう途中で失踪した。船は、マンガン鉱石を満載していたが、結局、船体の一部も発見されず、三百人の乗員の安否も不明なままに終わった。

 1963年には、7千トンの油送船が消息を絶った。この時は、ごくわずかの遺品が回収されたが、39名の乗り組み員と船体に関するあらゆる痕跡も発見することは出来なかった。 

 1973年には、ノルウエーの大型貨物船が、謎の失踪をした。
 徹底的な捜索にもかかわらず、漂流物の一片も発見されることはなかった。それは、あたかも2万トンの巨艦が溶けてなくなったようであった。
ノルウエーの大型貨物船アニータ号
 1974年、大型の帆船が、バハマからマイアミへ向かう途中で消息を絶った。発見の情報にかなりの賞金が掛けられたが、何の手がかりも得ることは出来なかった。

 失踪した船舶の中には、大きな貨物船やタンカーも含まれるが、そのほとんどが、完全な失踪状態で、遺品や遺体の一部さえ発見されることはないのが特徴だと言えよう。なお、失踪した船舶の中には、最新の原子力潜水艦も含まれているのである。

 しかし、このような奇怪な現象に遭遇し、危うく失踪するところを、からくも生還した人々もいる。
* 命拾いした人々の恐怖の体験 *
 1966年、タグボートの船長だったヘンリー氏は、荷船を曳航中に、奇妙な体験をした。その日は、晴天で、海上は穏やかであったはずなのに、どうしたことか、急に海が荒れ出したのである。同時に、あたりには、濃い乳白色の霧が漂い始めた。出し抜けに、羅針盤は、狂ったようにでたらめな動き方をし、あらゆる電力はストップしてしまった。やがて、水平線の堺がわからぬほど、激しい波が押し寄せ、彼の船は、木の葉のように翻弄され出した。
 それは、何か得たいの知れない力に、船が食わえ込まれたような感じだった。彼は、海中に引きずり込まれるのではないかというゾッとする感覚を味わった。全身から油汗が吹き出して来た。恐怖に駆られた彼は、エンジンのパワーを限界まで引き上げた。
 死に物狂いの綱引きが何分かの間、やり取りされた。ものすごい負荷が、かかり、エンジンは悲鳴のような音に変わったが、彼は必死になって操船を繰り返した。
異常な事態に陥ったが、からくも脱出することが出来たタグボート
 やがて、突然、船は自由の身になった。それは、見えない力から振り切ることが出来た瞬間のようでもあった。エンジン音は、まもなく以前の正常な響きに落ち着いた。それと、同時に霧は、みるみる晴れ出し、気がつくと、今までの恐ろしい悪夢が嘘だったかのように、あたりは穏やかな海に戻っていた。
 1964年には、小型旅客機の操縦士だったウェイクリー氏は、バハマからマイアミに帰る途中に恐ろしい体験をしている。それは、夜間、高度2400メートルで水平飛行中に、突然と起きた。急に、飛行機の両翼がぼんやりと光リ出したのである。その光は、青みがかった色をしており、次第に、機体全体を包み込み始めたのである。それとともに、計器類は、異常な動き方を示し全く制御が出来なくなった。彼は、手動で、必死の操作を試みたが、最後は、あきらめるしかなく、万策尽きた彼は、飛行機のでたらめな動きに任せるしかなかった。恐怖の時間は、5分間ほど続いた。しかしそのうち、幸運にも、青白い光が薄れ始め、計器類は正常に動き始めた。こうして、彼は、生還を果たすことが出来たのであった。
 これら生還者の証言から、次のような事実が浮かんで来る。まず、電力系統がすべてダメになるということ。二つ目に、羅針盤やコンパスなどの方向を示す装置が、全くでたらめな動きをするということである。このことから、強力な磁力を発するもの、強力な磁石か、もしくは巨大な鉄鉱床が、この海域の下に存在するのではないかと考えられたこともあった。しかし、電力が吸い取られたかのごとくなくなってしまう現象や、その他にも、奇妙な光や不思議な乳白色の霧を見たという証言があるが、それらは依然、説明することは出来ない。
 1948年に失踪した英国旅客機の場合では、捜索中に、同機から発せられたと思われる無線をキャッチしているが、その無線は、かなり弱いもので、まるで、距離も時間もはるか彼方より送信されて来たかのように思えるものであった。また、1970年には、小型の飛行機が、マイアミまでの飛行中、奇妙な雲の中を通過したが、到着してみると、どうしても必要とされる時間よりも30分も短かったという話もある。また、気象衛星などは、この区域の上空に来ると、かならず、異常をきたすというレポートもあるのだ。
* 時空間をゆがめる物体 *
 これらのことから、研究者の中には、重力の場を混乱させ、時空間を歪めてしまうような、全く我々の知らない未知の現象が関係しているのではないかと考える人もいる。つまり、運悪く、この現象に遭遇して、失踪した人々は、空間の歪みにより、他の次元に飛ばされてしまったということであろうか。もっと、分かりやすく言えば、アベンジャーの5機の編隊は、消失した多くの船舶とともに、乳白色の全く視界の効かない未知の空間、つまり、異次元の世界を、今なお、永久にさまよっているというのである。 
 しかし、このような考え方は、突拍子過ぎて、現実離れしており、ついてゆくことが出来ないと思われるかもしれない。だが、日常の世界を離れて、宇宙規模で捉えた場合、これらの現象は、ごく一般の物理現象の常識として、認めざるを得なくなるのである。
 時間と空間が、織物のように交互に組合わさった統一体であるというのは、アインシュタインが、相対性理論の中で主張していることであるが、彼は、時間や距離、空間などに対する我々の感覚は、相対的なものであるということを実証しようとした。言い換えれば、我々が10年という時間を頭で想像する場合、別な視点から見れば、それは、一瞬・・・ほんの瞬きする程度で終わってしまう時間に過ぎないというのである。
 相対性理論によると、質量が大きくなると、時空間にゆがみを持たらすとされている。そこでは、重力が増大するほどと、時間の経過は遅くなるのである。そして、光さえもその影響を受けて、奇妙にねじ曲がるのである。現に、恒星の近くでは、光はねじ曲げられているし、ブラックホールのような超超高密度な世界では、時間という概念そのものが消滅する。そのような次元では、過去も未来も現在も存在しない。同時に、空間とか距離の概念も存在することはない。
 そのような世界での感覚がどのようなものか、恐らく、地球上に住む我々には、想像することすら出来ないだろう。
 通常は、時間と空間が規則正しく連なっている地球上でも、時として、この法則が狂っている場所が存在するのかもしれない。あるいは、不規則に、移動を繰り返しているとも考えられる。それらは、地球上に、何個所か存在するのかもしれず、もしかすると、バミューダ・トライアングルは、そういった例に当てはまる場所なのかもしれないのだ。
* 常識が通じない場所 *
 例えば、アメリカ、オレゴン州サーディン川のそばに、オレゴンの渦と呼ばれる場所がある。そこは、昔からインディアンたちが、悪魔の土地と呼んで気味悪がっている場所でもある。その直径50メートルほどのエリア内は、通常の物理学の概念が全く通用しない空間なのである。
 その中心部には、傾きかけた古い家がある。
 1940年代に見捨てられ、打ち捨てられたものだが、今では、家全体が、何らかの力で、斜面を円の中心部に沿って、引きずり込まれているかのように傾いてしまっている。
 まるで、見えない 力 によって空間自体が、ゆがんでしまったように思える。そして、その家に入ると、とてもあろうはずもない不思議な現象が起こるのである。
オレゴンの渦の中心にある小屋
 まず、家に入って感じることは、気味の悪い不安定な感覚であろうか。人によっては、目眩がして吐き気さえもよおすこともある。そこでは、羅針盤などの計器類はたちまち狂ってしまい、グルグルと回り出すのである。ほうきは、一人でに直立し、タバコの煙りは、奇妙にらせんを描くように上に昇っていく。煙りだけではない、紙吹雪も、つむじ風に巻き込まれたようにぐるぐる回るのである。そこに立ち入った人間は、円の中心に向かって引っ張られるような奇妙な感覚に襲われ、体を傾けざるを得なくなる。
 しかも、場所によっては、人の身長が変化するのである。人だけではない。周囲の草木が、円の中心に向かって傾いて奇妙にねじ曲がった格好で生えているのだ。樹齢数十年の巨木でさえ、根本から曲がっている。

 電磁波や重力が異常をきたしているこの場所では、光さえもがねじ曲げられてしまう。カメラで捉えた被写体は、大きさ、高さが奇妙にねじ曲がり、身長の変化としてあらわれるのである。
 ここには、これまで多くの研究者が訪れているが、今なお、その不思議な現象が、なぜ起こるのか科学的に解明されてはいない。
 こうした場所は、超常現象の多発地帯としても知られ、バミューダ・トライアングルもそうした不可解な場所の一つではないかと考えられているのだ。
渦の内側に立った人間は、背丈が変化する!
* 日本近海にもある魔の海域 *
 船舶の失踪が多い魔の海域と呼ばれる場所は、日本近海にもある。硫黄島とマーカス諸島の間、東京からは約1300キロほど離れた海底には、複数の海底火山があり、度々、爆発しては、多くの船を沈めて大惨事を引き起こしていた。水深2、3千メートルはあるはずの場所が、わずかの時間内で、水深3メートルにまで、変化する恐ろしい海域なのである。

 特に、明神礁と呼ばれる海底火山は、明治以後たびたび噴火を繰り返してきたが、特に、1950年〜1953年にかけて、幾度となく爆発を繰り返すようになった。この間の噴火はまことに凄まじく、大爆発によって、新島が形成されたほどであった。
 この時、第一回目の調査船、神鷹丸(しんよう)(229トン)は、果敢にも、軽石を採取するため火口付近にまで接近したが、その時の凄まじい様子を記録している。
「それはなんとも形容できないほどの凄まじい光景であった。船はゆっくりと進んでいった。そして噴火口まであと1.5キロほどの至近距離まで近づいたとき、突如、目の前の海面が直径6百メートルほどの半球型に隆起するや、見る見るうちに暗青色の巨大なドームとなっていった。そして、それは、まもなく放射状に割れると、そこから白い水柱と黒い噴出物が巨大な打ち上げ花火のように猛烈な勢いで空高く飛び散っていった。噴煙は高さ8千メートルに達した・・・」
 神鷹丸は、観測中、突発的な爆発に3度も遭遇している。しかし、いずれも間一髪のところで命拾いしている。
 しかし、続いて、派遣された海上保安庁の観測船、第五海洋丸(211トン)は、運悪く、明神礁の大爆発に遭遇してしまい、海の藻屑と消え去る運命にあった。消息を絶ってから、大規模な捜索が、海と空から徹底的に開始されたが、有力な手がかりは何一つ見つかることはなかった。捜索三日目になって、やや離れた海域で、第五海洋丸のものと思われる救命ブイの破片やなけなしの遺品が海面に漂っているのを発見したが、船体も乗組員31名の遺体も、ついに発見されることはなかったのである。
 恐らく、火口を探すために接近しすぎた第五海洋丸が、突如、起こった巨大噴火に巻き込まれ、アッと言う間に、船もろとも海底の水底に引き込まれたのであろう。
 発見された救命ブイには、その時の壮絶さを物語っているかのように、無数の火山弾が痛々しく突き刺さったままだった。
 この海域では、その他にも、大型貨物船が次々と消息を絶つと言う事件が続いていることから、この後、日本政府は、ついに、危険区域に設定したのであった。
明神礁の凄まじい爆発。第五海洋丸も、これに巻き込まれた。
 バミューダ・トライアングルにしろ、魔の海域にしろ、いつも、船舶、航空機が失踪した時には、例外なく、素晴らしい天候の場合が多いと言う。悲劇は、いつも突然とやって来て、30分も経つと、何ごともなかったかのように穏やかになるのである。

 それは、超自然的な存在が、未知の領域に踏み込もうとする我々を阻もうとするかのようにも感じられる瞬間でもある。

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参考文献 「神秘と怪奇」コリン・ウィルソン 学研 
「失われた世界への旅」矢追純一=編 同朋舎出版
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